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INTERVIEW DATE : October 08,2016

震災後の街に活気を取り戻す!「フラ女将」が実現する地域活性の現状

~いわき湯本温泉から世界へと広がる“ワクワク感”~

福島県いわき市の中央に位置する「いわき湯本温泉」は奈良時代から続く歴史ある温泉地。近代に入り炭鉱のまちとしての栄枯盛衰や温泉の枯渇を経験し、歓楽型温泉観光地として復活を果たした。そしてまた大きな困難である東日本大震災に直面。その影響で減少した観光客数が思うように回復しない。

「このままでは、わが子、孫の代にはいわき湯本温泉がなくなってしまうのではないか」。

「私たちが愛してやまないこのまちを後世まで残したい」。

そこで立ち上がったのが、いわき湯本温泉「湯の華会」の女将たち。

トコナツ歩兵団の協力のもと、着物でフラダンスを踊る「着物deフラ」に着目。そこからいわき市に根付くフラの文化といわき湯本温泉の持つ「和」の文化を融合させた、「フラのまち宣言」を行い、「フラ女将」を誕生させた。

ただ、これまでの歩みは決して平坦なものではなかった。また、これからの課題も山積みである。では、フラ女将はどのようにして実現し、これからどうなっていくのか。女将で結成される「湯の華会」会長の大場さんと、いわき市常磐支所市民課の野田さんに話を伺った。

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・いわき市を復興させるために立ち上がった女将たち

大場:2011年の震災後、いわき市は、原発の煽りと風評被害により大きな打撃を受けました。しかし、かつては炭鉱で栄えたまちです。大変な労働環境ということもあり、炭鉱に関わるすべての人々は、運命をともにする「一山一家」との認識があったのです。そのため、住民たちは強い連帯意識で結ばれていました。

野田:私にとって女将という存在は、ベールに包まれていて、普段はお会いする機会のない方々です。そのような方々がまちのPRにどこまで協力してくれるのか。また、我々はどのように関わることができるのか。最初は、不安だらけでした。

大場:たしかに不安はありました。でも、私たちには「湯本という小さなまちに詰まったたくさんの魅力を伝えたい」という強い気持ちがあったのです。そこで私たちは、一山一家の精神で、街の復興に取り組むことを決意しました。

 

・「フラのまち宣言」へ

大場:渡部さんからのアドバイスもあり,先人から受け継いだ温泉の“和”の文化と、スパリゾートハワイアンズが新たに確立した“フラ”の文化を融合させて、まちづくりをすることに決まりました。「フラのまち宣言」の発表です。

野田:女将たちが結束して「やる!」と決めた後のパワーは凄まじいものでした。まちの地区代表が集まる会議で突如、「いわき湯本温泉はフラのまち宣言をしたい!」と報告したのです。さすがにそのときばかりは、私も顔面蒼白になってしまい……。まち中から「勝手なことをするな!」と怒られるのではないかと冷や冷やしていました。

大場:フラのまち宣言に至るまでも、また宣言した後も、歴史に根付く問題やリスクはありました。それでも、私たちはやろうと決めたのです。

野田:不安をよそに、女将さんたちの力強い「フラのまち宣言」は、まちの期待を集めました。地区の様々な団体や企業など、資金面でバックアップをしてくれる人々が増加。それまで積極的に参加することのなかった街の人々も、憧れの女将さんが奮起する姿に、いつの間にか強い関心を抱いてくれるようになったのです。

 

・トコナツ歩兵団によるケミストリー「フラ女将」

大場:当初、我々としては上品なプロモーションをしていきたいと思っていました。しかし上品なものは、他のプロモーションに埋もれてしまい、目立つことは難しいと感じていたのです。そんな中、渡部さんが遊び心あふれる指導をしてくれたおかげで、「自分たちで何か面白いことをやろう!」と思えるようになったのです。渡部さんたちの提案は型にはまっておらず、斬新で、とても刺激を受けました。

野田:トコナツ歩兵団はいわき湯本を俯瞰したうえで「フラ女将」という固有の企画を作り上げてくれました。パンフレット1つとっても、冊子全体のデザインや構成は今までになかったテイストです。いわき市内だけではなく、他の地域からも絶賛の声をいただいています。

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また、会議の雰囲気づくりも非常に上手で。否定したり、言葉を遮ったりすることなく、女将さんの言葉を引き出し、湯の華会を盛り上げてくれています。まさに、地方都市にはない感性で我々を引っ張ってくれる存在です。

 

・女将同士の絆も

大場:フラ女将として活動をするというのは、決して簡単なことではありません。それぞれの女将は旅館の仕事の合間をぬって活動するしかなく、その時間を確保するための調整だけでも一苦労です。でも、せっかく参加するならと、アイドルになったつもりで楽しむようにしています。

2016年4月に発行した小冊子には、女将14人が登場。一人一人がポーズを取り、それぞれのキャッチフレーズも付けた。またレトルトの「フラ女将カレー」やフラ女将のラベルを貼ったオリジナル純米酒「絆」など、オリジナル商品の開発にも力をいれています。

野田:最近では、いわき観光まちづくりビューローが企画した「女将と一緒に田植えをするツアー」に、首都圏から多くの人が参加してくれました。そのときは、女将が“もんぺスタイル”に身を包み、参加者と一緒に田植えをした後、フラを披露。非常に好評でした。

大場:よく、周りの人からは「女将同志ライバル関係なのでは?」と言われます。でも実際は、女将ならではの悩みを打ち明けられる数少ない仲間として、お互いの連帯感も生まれています。

 

・広がるフラ女将の活躍の場

大場:現在では、日本だけではなく、海外へも活動範囲を広げています。先日は市の要請を受けてオーストラリアへ行ってきました。

そこでは、いわき市の郷土芸能である念仏踊り「じゃんがら」を披露。人々が心を震わせ、涙する方もいたほどで、心からやってよかったと思っています。

野田:もちろんフラ女将の活動は、いわき市内でも注目を集めています。今では他のプロジェクトからも問い合わせがたくさんくるほどで。大きな盛り上がりを感じます。これもみんな、女将さんと渡部さんたちのおかげです。

私も最初はプレッシャーの中で動いていました。今では、女将さんの明るさと突破力に助けられつつ、自ら楽しんで取り組んでいます。彼女たちのさらなる活躍に、ぜひ期待してください。

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2015年8月の「フラのまち宣言」後、いわき市には「フラ女将はどこで踊るの?」との問い合わせが殺到した。

2016年7月からは、いわき湯本温泉の足湯広場で定期公演「フラのまち オンステージ」(月1回、12月までの限定開催)をスタートさせた。フラ女将たちは艶やかな着物で登場し、浴衣姿の住民や宿泊客ら多くの人々の前で、優雅な「着物deフラ」を披露。2回、3回と回を重ねるごとに地区の人々も加わり、より夜の温泉街を華やかに彩り始めている。

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海外にもその活躍の場を移しているフラ女将は、今後、どのようなパフォーマンスをみせてくれるのか。楽しみだ。

<インタビュイー>
・野田 泰弘
いわき市役所 常磐支所 市民課 主幹(兼)課長補佐
フラ女将マネージャー

・大場 ますみ
心やわらぐ味の宿 岩惣 女将
「湯の華会」会長

<インタビュアー:五十嵐真由子>

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